今年もこの小さな工房にたくさんの人が遊びに来てくれて手縫いの革小物製作を体験し、喜んでいただけたことほんとうに嬉しく思います。新しい場所での出張ワークショップにもご縁があり、私もたくさんの経験をさせていただいることとても感謝いたしております。
作り手としてはあまり陽の当たらない棘の道が続きますが、皆さんに喜んでもらえるような、ものづくりを密かにいつも考えています。こういう風に考えられるようになったのも、製作体験をしてくれたお客様、オーダーメイドの鞄、オリジナルのバッグ、革小物を選んでいただいたお客様から墨田、台東の熱い想いをもった地域の皆さま、お手伝いで陰で支えてくれている皆さんのお陰です。
製造メーカーの20代中盤から30代頃は売上を上げる事、上を目指すことがステータスだと思い込んでいました。請負の生産数も増やしました。生産管理から納期管理が中心でしたが、だんだんとコストも厳しくなり、あるきっかけで大量生産を請け負い東南アジアの工場にも依頼しました。しかし数年わずかで厳しい状況を招き大失敗の経験をしました。拍車をかけるように価格競争が一層激しくなり、このころ何をやっても上手くいきませんでした。
悩み追い込まれ「やめるか」「流通業のままか」「自分でつくるか」の選択、作り手を選んだ理由は20代前半に勤めていたメーカーの社長や尊敬していた職人さんの「当たり前に手間をかける作り」を僅かながら間近に見ていたからです。しかし手間をかけてれば下請けとしては成立せず、当然採算は合いませんでした。生き残りもかけて自社ブランドを立ち上げを決意しますが、テストの繰り返しばかりで時間ばかりが経っていました。このころ40代に差し掛かっていました。そんなころ東京スカイツリーの開業までわずかなころ「すみだ川ものコト市」の出店の機会がありました。今だから言えますが、初めての経験で宣伝になればいいかと、浅はかな気持ちで参加しましたが、そこには今まで見たことのない笑顔と温もり、優しさがありました。ボランティアのスタッフさんが数か月前、当日早朝から準備してくれていたことを後で知り感謝の気持ちが溢れました。恥ずかしながらこんな素晴らしい経験は初めてで、もっと参加したい、知りたい、自分も何か役に立ちたいと思い、地域の皆さまに顔を出すようになりました。実はワークショップもこの頃から始めました。手縫いは下請けで提案した数年前、パートさんも3人雇い、自分自身も朝から晩まで縫いましたが、加工費はパートさんに支払って自分にはほとんどありませんでした。手縫いなんか大嫌いでした。でも地域の皆さまの努力しているさまを見て、自分も手縫いを再開しようと埃かぶった箱を出し、やってみるものの身体は覚えていた。道具も経験も捨てないで良かった。いつもよくしてくれる東向島珈琲店さんに無理を言って初めてパスケース作りをしました。みんなとても喜んでくれました。
地域の方と触れ合う中で、売上や採算ばかり気にしていた自分の未熟さにも気づきました。業界が悪いからうまくいかない、そう思い込んでいましたが、自分自身の計画、ビジョンの立て方、つまり自分が悪いということにも気づきました。催事イベントでは、革の事といったら何でも本革と思っている人ばかりで、自分の店では説明しやすいですが、アウェイではほとんどの人が素通りしていきます。心折れそうなコトもしばしありますが、解りあってくれた方が一人増えた時、ワークショップで喜ぶ姿、声、私の凝り固まった心を溶かしていってくれました。。。今年もいろいろ大変な事もありましたが、いい出会いもありました。年の瀬でしょうか、ついなんか、おセンチになってしまいました。長くなってしまい、年も明けてしまうので、この辺で。(続編もあるかも知れませんが)
今年2017年も皆様に出会えたことをほんとうに感謝しています。まだ製作に着手できていないお客さまもたくさんあるので、心苦しいこともありますが、出来るだけ早く着手いたしますので、もうしばらくお待ちください。作り手として棘の道が続きますが、もっと皆さんに喜んでもらえるよういつも考えています、来年も皆さんと楽しみたいのでどうぞよろしくお願いいたします。そして2018年皆さまが良い年でありますように。
0 件のコメント:
コメントを投稿